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人の死を説いて、直ちにその非を挙げんは、後言しりうごとめく嫌きらいはあるが、抽斎の蔵書をして散佚さんいつせしめた顛末てんまつを尋ぬるときは、豊芥子もまた幾分の責せめを分たなくてはならない。その持ち去ったのは主に歌舞音曲おんぎょくの書、随筆小説の類である。その他書画骨董こっとうにも、この人の手から商估しょうこの手にわたったものがある。ここに保さんの記憶している一例を挙げよう。抽斎の遺物に円山応挙まるやまおうきょの画え百枚があった。題材は彼かの名高い七難七福の図に似たもので、わたくしはその名を保さんに聞いて記憶しているが、少しくこれを筆にすることを憚はばかる。装※(「さんずい+(廣-广)」、第3水準1-87-13)そうこう頗る美にして桐の箱入になっていた。この画と木彫もくちょうの人形数箇とを、豊芥子は某会に出陳するといって借りて帰った。人形は六歌仙と若衆わかしゅとで、寛永時代の物だとかいうことであった。これは抽斎が「三坊さんぼうには雛ひな人形を遣らぬ代かわりにこれを遣る」といったのだそうである。三坊とは成善しげよしの小字おさなな三吉さんきちである。五百は度々清助せいすけという若党を、浅草諏訪町すわちょうの鎌倉屋へ遣って、催促して還かえさせようとしたが、豊芥子は言ことを左右に託して、遂にこれを還さなかった。清助は本もと京都の両替店りょうがえてん銭屋ぜにやの息子むすこで、遊蕩ゆうとうのために親に勘当せられ、江戸に来て渋江氏へ若党に住み込んだ。手跡がなかなか好いいので、豊芥子の筆耕に傭やとわれることになっていた。それゆえ鎌倉屋への使に立ったのである。
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