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この年十二月二十一日の夜よ、塙次郎はなわじろうが三番町さんばんちょうで刺客せきかくの刃やいばに命を隕おとした。抽斎は常にこの人と岡本况斎きょうさいとに、国典の事を詢とうことにしていたそうである。次郎は温古堂おんこどうと号した。保己一ほきいちの男だん、四谷よつや寺町てらまちに住む忠雄ただおさんの祖父である。当時の流言に、次郎が安藤対馬守信睦のぶゆきのために廃立の先例を取り調べたという事が伝えられたのが、この横禍おうかの因をなしたのである。遺骸の傍かたわらに、大逆たいぎゃくのために天罰を加うという捨札すてふだがあった。次郎は文化十一年生うまれで、殺された時が四十九歳、抽斎より少わかきこと九年であった。
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