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痰たんに血の交まじらぬのを慰安とするものは、血の交る時にはただ生きているのを慰安とせねばならぬ。生きているだけを慰安とする運命に近づくかも知れぬ高柳君は、生きているだけを厭いとう人である。人は多くの場合においてこの矛盾を冒おかす。彼らは幸福に生きるのを目的とする。幸福に生きんがためには、幸福を享受きょうじゅすべき生そのものの必要を認めぬ訳には行かぬ。単なる生命は彼らの目的にあらずとするも、幸福を享うけ得る必須条件ひっすじょうけんとして、あらゆる苦痛のもとに維持せねばならぬ。彼らがこの矛盾を冒おかして塵界じんかいに流転るてんするとき死なんとして死ぬ能あたわず、しかも日ごとに死に引き入れらるる事を自覚する。負債を償つぐなうの目的をもって月々に負債を新たにしつつあると変りはない。これを悲酸ひさんなる煩悶はんもんと云う。
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