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阿部家への帰参が※(「りっしんべん+(匚<夾)」、第3水準1-84-56)かなって、枳園が家族を纏まとめて江戸へ来ることになったので、抽斎はお玉が池の住宅の近所に貸家かしいえのあったのを借りて、敷金を出し家賃を払い、応急の器什きじゅうを買い集めてこれを迎えた。枳園だけは病家へ往ゆかなくてはならぬ職業なので、衣類も一通ひととおり持っていたが、家族は身に着けたものしか持っていなかった。枳園の妻勝かつの事を、五百いおがあれでは素裸すはだかといっても好いいといった位である。五百は髪飾から足袋たび下駄げたまで、一切揃そろえて贈った。それでも当分のうちは、何かないものがあると、蔵から物を出すように、勝は五百の所へ貰もらいに来た。或日これで白縮緬の湯具ゆぐを六本遣やることになると、五百がいったことがある。五百がどの位親切に世話をしたか、勝がどの位恬然てんぜんとして世話をさせたかということが、これによって想像することが出来る。また枳園に幾多の悪あく性癖があるにかかわらず、抽斎がどの位、その才学を尊重していたかということも、これによって想像することが出来る。
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